【2】悲撃のヒロイン症候群の結成とアイドルシーンにおける位置付け——根強い同性支持と「病みかわ」から「地雷系」への接続
2018年〜2019年始めのインディーズアイドルシーン
ヒロシンは2019年2月19日、新宿BLAZEで行われた主催お披露目公演《舞踏会》でデビューを飾った。
ここで2018年から2019年始めにかけてのインディーズアイドルシーンの状況をざっくりと振り返っておこう。TOKYO IDOL FESTIVAL(TIF) 2018のメインステージのラインナップを見ると、前年にメインステージ争奪戦を勝ち抜いて「夏の主役はニジマスだ〜!」の名フレーズを生み出した26時のマスカレイド(ニジマス)がこの年にも実力でメインステージに出演。また、2018年12月19日に開催された《MARQUEE祭 Vol.22》でもヘッドライナーを務めており、同イベントには26時のマスカレイド以下、ナナランド、虹のコンキスタドール、NEO JAPONISM(旧体制)や真っ白なキャンバスといったグループが名を連ねている。ニジマスは翌年2月にはメジャーデビューを発表するという最も勢いに乗っていたタイミングであり、この時代のメインストリームの中心に位置するグループの1つであったと言っていいだろう。
BELLRING少女ハートやBiSの系譜にある王道から外れたオルタナティヴ路線を行くアイドルのシーンが一定の成熟を見せつつあったのもこの頃で、フィロソフィーのダンスやsora tob sakanaといった“楽曲派”文脈から頭角を表したグループがTIFメインステージに出演。両グループは2018年の「アイドル楽曲大賞」でもそれぞれ好順位をマークしている。また、2日目のトリを飾ったBiSHは、2018年末に日本レコード大賞の新人賞を受賞している。
病み系、ダーク系、ゴシック系アイドルの系譜
そんな2018年から2019年のアイドルシーンの流れの中で、ヒロシンは当初、オルタナティブなロック系統のグループの中でも特に「病み系」アイドルの文脈で受容された。
当時まだあのちゃんが在籍中であったゆるめるモ!や、コドモメンタル所属のぜんぶ君のせいだ。を筆頭に、目元を強調する病み系メイクやダウナーな言動・歌詞といった「病んだ」スタイルを特徴とするグループを総称してこのように呼ばれるようだが、ヒロシンの支持層やビジュアル・楽曲コンセプトがこれらのグループと同系統にあるかと言われればやや疑問符がつくところ。
「病みかわいい」の先駆けとなったぜんぶ君のせいだ。は2015年結成。同じ“病み”をテーマとしつつも、ヒロシンのようにダークな印象はあまりない。
一方より射程の広い言葉であれば「ダーク系」と呼ばれたりもするが、こちらは字義通り暗いビジュアルイメージや歌詞、楽曲のグループであれば含んでしまえるので、系統の分類としてはやや弱い。もう少し絞って「ゴシック系」と形容するのならば、フリルを多用しつつも黒を基調とする厳かなファッションスタイルというイメージがしっかりヒロシンに合致すると言えるだろうか。
【舞踏会】
— 悲撃のヒロイン症候群 (@heroineSx) January 30, 2019
悲撃のヒロイン症候群
お披露目 主催LIVE 舞踏会
▷日時
2月19日 新宿BLAZE
OPEN 17:30 START 18:30
▷料金
入場料 無料(1D)
※整理番号は当日抽選になります
抽選券がなくても入場は可
▷出演者
悲撃のヒロイン症候群
じゅじゅ
劇場版ゴキゲン帝国
BLACKNAZARENE#ヒロシン pic.twitter.com/16JvrnbDtI
悲撃のヒロイン症候群はお披露目ライブの対バンとして劇場版ゴキゲン帝国、じゅじゅ、BLACKNAZARENEの3組を選んだ。このうちじゅじゅとBLACKNAZARENEは後々に至るまでHEROINESグループと比較的密な交流を持つことになるグループであり、いずれもダーク系、ゴシック系のコンセプトを持っている。とはいえこの当時、じゅじゅにしてもBLACKNAZARENEにしても出演するイベントの毛色はどちらかといえば“楽曲派”、あるいは広く(ラウド)ロック系統の対バンが多く、ビジュアルや楽曲の持つコンセプトの親和性による結びつき、交流はそれほど強く形成されていなかった。というよりもむしろ、この系統にあるグループがまだそれほど存在していなかったのである。
【お知らせ】
— BLACKNAZARENE (@blacknzrn) December 29, 2019
明日渋谷WOMBで行われます「じゅじゅ ちゅん生誕-生前葬-」はドレスコードが"黒"という事で
久々にアー写の黒衣装での出演&特典会となります
12/30(月)渋谷WOMB
じゅじゅ ちゅん生誕-生前葬-
開場14:00/前売3500円
※入場は整列順入場
チケットはこちらhttps://t.co/uW5guJQzjc pic.twitter.com/Cs0eCWQ7La
そんな中にあってデビュー公演の共演にこの4グループを選んだところに、ヒロシンの感度の高さとコンセプトメイクにおける強い指針が感じられる。そしてこの先で見ていくように、この同系統のグループの数が増えていく、そしてその結び付きが強化されていく先駆けとなったという点がヒロシンの革新的だったポイントの一つなのである。
2018年、ヒロシンの少し前にはZOCが、ヒロシンの1年後の2020年4月にはモノクローンがデビューしており、同世代女性を中心とする若いファン層からの支持を集めるSNS発のグループ、という点で近しい文脈で広くみれば一体的な流れを形成していく。モノクローン発足時には「ヒロシンの二番煎じだ」という反発が一部で見られる事態もあったのだが、今になってみればそれもまた一つのシーンが形成されていく瞬間の常というものであろう。
