支持層における女性の多さの理由と「地雷系」への接続
「病み系」に「ゴシック系」、定義づける言葉をどう選ぶにしても、ヒロシンと近しい系統にあるグループの特徴として顕著なのは、メンバーと近い世代の若い女性ファンが圧倒的に多い点であろう。この当時のじゅじゅは、SNSでのバズにより圧倒的な女性支持を集めたメンバー・ちゅんの存在もあって当時のライブアイドルグループの平均に比して女性ファンが多く、「THUG×kawaii」として強い女性像を掲げるBLACKNAZARENEも同様に同性からの支持を集めていた。
女性ファンが増えるきっかけ、理由にもさまざまある中で、この系統のグループにおいては特に共感性というポイントが大きいであろう。あのちゃんを支持しそのファッションやスタイルを真似る同性ファンが「あのギャ」とカテゴライズされたように、「病み系」に類するスタイルやカテゴライズは、「(同性が手本として真似しやすい)ファッションのカテゴリを指す言葉でもある」という点と、「病んだ素の部分を隠さず発信することで同性ならではのリアルな共感を得られる」という点において同性の支持を得やすい。
「全ての悲劇のヒロインに幸せが訪れますように。」というメッセージを掲げるヒロシンが切り込んだのはまさにここで、同性同世代、メンバーらと同じような立場にある人々に寄り添い救う存在になるべく結成されたアイドルグループなのである。そのコンセプトに違わぬように組まれたお披露目対バンライブは功を奏し、公称キャパシティ800名の新宿BLAZEを埋め尽くす824名を動員。その半数以上が10〜20代の女性であったというレポート*3も残っているほどで、初動からコンセプトメイクの狙い通りの支持を得ていたことが分かる。
*3 https://musit.net/column/16572
そして2010年代終盤から2020年代初頭、「地雷系」というキーワードが人口に膾炙していく中で、ヒロシンはより一層その地位を明確にしていくことになる。次回はこの時代性の観点も含めて、同性からの共感という視点を掘り下げていく。