マス志向のプロモーション戦略で広がる輪
AsIsの活動において大きく特徴的なのは積極的なマス向けの広告展開。デビュー1年目の2024年秋頃より、楽曲「いつかの僕らの声に応えて」や「ツワブキ」のミュージックビデオを広告として新宿、渋谷といった繁華街の街頭大ビジョンへ数回にわたって出稿している。デビュー1年目の地下アイドルが街頭ビジョンへの広告を複数回出すというのは予算的な意味でなかなか簡単に真似できる戦略でもないと思えるが、ここにしっかりとリソースを割くことを選んでいるのだ。
地下アイドルにとって必ずしも打率が高いとは言えないマス向けの広告に思い切って投資することができるのは、その先のプロダクト、クリエイティブに大きな自信があればこそだろう。AsIsの場合は先述の通り、欅坂を筆頭とする坂道グループのファン層には少なからず刺さる要素を多数持っており、デビュー当初からある程度「知ってもらうきっかけさえあれば後は確実に引き込める」という水準に達している。ターゲットを広くとることのメリットが確実に存在しているのだ。
結果として「きみの好きを否定なんかしない」のミュージックビデオは公開3か月の7月現在YouTube再生回数20万回を突破しており、コメント欄の反応を見ていても、元々欅坂46や櫻坂46のファンで気になったという声が多数見られる。これはななむぎプロデューサーの坂道リスペクトが坂道ファンに好意的に受け取られていることの証左でもある。坂道グループのファンダムの規模を思えば、AsIsがこれから開拓していくことができる潜在的なファン層はまだまだ厚く、さらなる拡大も期待できそうだ。
充実した深掘りコンテンツと“地上アイドル”的な取り組み
そしてこの街頭広告に限らず、ななむぎのプロデュース視点は自身の経験からもたらされる地上アイドルの水準。運営しているAEGIS GROUPが元々ライバー事業・YouTube領域を得意とする事務所であることも手伝ってか、SNSを活用したプロモーションや企画においては、従来の地下アイドルの枠組みにとらわれず細かいところまで力を入れている印象がある。
デビュー当初の覆面でTikTokを踊るところから始める情報解禁は、「実は私たち……」というTikTokの定番フォーマットを取り入れつつ、K-POP式のティザープロモーション戦略と融合させたもの。オーディションの裏側やVlog、MVやダンスプラクティスといった動画コンテンツもかなり充実しており、SNSや広告から入ってきたファンを深く引き込む準備が整えられている。
細かいところで言えば、対バンライブ出演後の集合写真にメンバーカラーとフルネームがわかるように文字入れして投稿するという手法は、AKB48のようなマスメディアの音楽番組に頻繁に出演する大人数グループが日常的に行なっているものを参考にしていると思われる。多数のアイドルが入れ替わり立ち替わり出演する対バンライブを主戦場とするライブアイドルにとってももちろん有効な手法のはずなのだが、これを丁寧にやっているライブアイドル、地下アイドルグループは意外と見られない。たまたまライブを見て気になったという新規のファンにとってはありがたい取り組みだろう。
2025年全国ツアーへ
AsIsは現在、《AsIs 1st TOUR -NO EDIT. NO FILTER.-》で全国5都市を周っている最中。「編集なし、フィルターなし」というツアータイトルはまさに「ありのままの姿でいい。」というコンセプトメッセージを表現したものになっている。地方でも勢力を伸ばして向かう先のツアーファイナルは品川インターシティホール。さらに勢いを増していくAsIsの2025年の活躍から目が離せない。