AZATOYが描く、傷つきながらも生き抜くための武装としての「かわいい」
2組目はAZATOY(アザトイ)。2023年10月に7人組でデビュー、活動半年の記念ライブを目前に1人が卒業・2人が脱退して4人となり1年活動、2025年4月に新メンバー3人を迎えて再び7人組となる、という比較的変動の大きい経歴を持つ。「可愛いを武器に世界の不条理を突破する!」をコンセプトとしており、魅惑的な大人の女性や歪んだ愛情を描いたような楽曲を特色としている。
毒っ気のある女の子らしさと、決していやらしくはならないエロティックな表現をひとつの世界にまとめあげるバランス感覚にこゆびプロデューサーの手腕を感じるAZATOY。〈あざとくて何が悪いの?〉と大見得を切る「AZATOY GIRL」(2023年)が典型であるが、〈私は私だし〉という自分ウケ上等のスタンスは昨今のアイドルのメインストリームである「自己肯定感」のテーマとも通じるもの。そこにモノクローン「加工して何が悪い!」(2021)的な地雷系アイドル系譜のエッセンスもハイブリッドされることでグループテーマである「あざとい」がビビッドに表現されている。
新メンバーを迎え入れて体制を改めての新曲「絶対!悲ロイン♡」では一聴してメルヘンチックなかわいいソングの雰囲気を出している。新体制衣装もこれまでから一転カラフルなメンバーカラーのものに変化しているのだが、歌詞の内実によく耳を傾けてみれば、単に「かわいいだけ」ではないことがわかる。むしろ女の子の「かわいい」が出来上がる裏にあるリアルを突くのがAZATOYの表現である。
この曲はAメロの冒頭に〈クラスで1番可愛いあの子の/左手首にバーコードが刻まれているって〉というフレーズがあるのだが、傷を「バーコード」に喩える表現はこゆびちゃんが以前から自身の楽曲でもこだわって使用してきたもので、AZATOYメンバー・ちゃんみうの誕生日に際してこゆびちゃんが書いたnote記事でも触れられている。
私は女の子の身体に刻まれた傷をバーコードだと思っている。
命の価値、生きぬいてきたという証。
不条理な世界をときに傷つきながらも生き抜いてきた女の子の、世界と闘うための武装として必然に身につけた「かわいい」。それがAZATOYの根底にあるテーマなのである。