京都発「やらされてない」セルフプロデュースアイドル、0番線と夜明け前とは?——関西アイドルシーン新潮流の中で
関西ライブアイドルシーンの現在
従来、関西のライブアイドルシーンでは、PassCodeや我儘ラキアらが切り開いたエレクトロ寄りのラウドロック・アイドルの色が強い状況があった。しかし近年、0番線と夜明け前を筆頭として、2010年代〜2020年代始めの東京発楽曲派アイドルの系譜に位置するトーンを持った関西の新興グループが少しずつ勢力を持ち始めている。例えば、きのホ。の古都レコード(京都)から第2弾グループとして誕生したAQや、代代代のマネージャーであったポチりさがプロデュースするcleomery(大阪)といったグループがオルタナティブ・アイドルとして注目を集めつつある。
3月に大阪で開催されたくぴぽ presents「服部フェス」に際して、主催のくぴぽ・まきちゃんがゲストの0番線と夜明け前に寄せた紹介文は、そんな関西楽曲派アイドルシーンの最前線を評した象徴的で熱いメッセージだ。
3/22(土)
— まきちゃん(くぴぽ) (@makichan_qppo) March 21, 2025
【0番線と夜明け前】
たぶん今関西で色んな人がこの子たちのセンスに懸けてると思う。
0番線を好きな自分を誇れてると思う。
これだからやめられねぇんだってそう思わせるアイドルだと思う。
1年後どうなってるか分かんない。… pic.twitter.com/LbBSbVsBV7
さらに一歩離れたところではAxelightや.LiNIXLiNE.、meluQのようなクラブ・ダンスサウンド系のグループもムーブメントに加わりつつあり、関西を拠点とする緩やかなうねりが生まれようとしている。
楽曲派の新フェーズと一大“転生”時代の中で
楽曲派という界隈自体、象徴的なグループの活動終了やファンの母数の縮小により衰退が叫ばれて久しい現在。しかし一方で、0番線と夜明け前のように強い指向性と自主性をもち、2010年代後半の伝説的グループたちの空気感を感じさせるグループの登場は、このシーンのある種の成熟、「一周まわった」フェーズの到来の証であるようにも感じられる。楽曲派グループを「〇〇みたいな……」と説明する〇〇には、しばしばその音楽ジャンルにおける往年の有名バンドの名前が入っていたものだが、2025年現在はそこに以前活躍したアイドルグループの名前が入るようになっているのを感じる。アイドルがニッチな音楽を、というスタイルが意外性や戦略要素となる時代はとうに過ぎ、リスナー側にもそれを素直にアイドルの1つのスタイルとして受容する土壌が出来上がっているのだ。
また、この「一周まわった」現象はアイドルたち自身の側にも起きている。昨今、すでに一定のキャリアがある“転生”メンバーを多数集め、それ自体が一つのコンセプトやアピールポイントになっているような新生グループが多数誕生している*1。コンセプトとまでは言わずとも、地下アイドルという業界全体が年数を重ねた現在ではほとんどのグループでそれが2度目、3度目のアイドル活動というメンバーの存在が当たり前だ。実は0番線と夜明け前も例外ではなく、メンバー3人ともそれぞれ界隈では名の知られたグループでの活動経験がある。このようなフェーズにおいて、アイドル自身が選び取る第2・第3のキャリアとして「セルフプロデュースでやりたいことをやる」という方法が確立され、それがアイドルファンにも一定程度受け入れられる土壌が出来上がっている現況は、シーンにとって歓迎すべきものだ。
*1 ずばり「転生」そのものをコンセプトとしたNARLOW、夢の再燃を追いかけるzanka、元私立恵比寿中学ぁぃぁぃの参加で注目を集めるMaison de Queenや、ASOBISYSTEMのfav meなどが代表的な例である。
JR京都駅「0番線」は、地続きになっている30番ホームと合わせて約558メートルあり、「日本一長い駅ホーム」としても知られている。0番線と夜明け前も、そんな元ネタと同じように、シーンで唯一無二のポジションを獲得することができるだろうか。関西における新機軸のムーブメントと、楽曲派の成熟という2つの時代背景の中で、グループにかかる期待は大きい。いつの日かシーンの夜明けを牽引するグループになる姿を見届けたい、そんなグループである。
