Ringwanderungは2019年結成の5人組。2024年2月にボーカル面を牽引したメンバー・みょんが脱退し、以後約半年間は4人体制での活動となった。同年9月のKT Zepp横浜ワンマンライブまでを4人でパフォーマンスし、そのアンコールより新メンバー・篠田百音を迎えて再び5人体制へ。そして今年4月から5月にかけて「リンワン春の楽曲祭」と題した連続音源リリース企画を実施。既存楽曲の大半を篠田のボーカル入りで聴くことができるようになった。今回は「春の楽曲祭」でリリースされた既存楽曲から「Lily」「Last Summer Daydream」、新体制新曲「LV」「Parabora」をピックアップしてレビューする。
リンワン春の楽曲祭
メンバーの入れ替わりが激しいアイドル業界において、メンバーが変わる度に既存曲の再録を行うのは大変なことであり、あまりそこに頓着しない、あるいはリソースを割くことができないグループも多くある。一方ファン心理としては最新の体制の音源を素直な気持ちで聴くことができるというのはやはり嬉しいものであろう。
Ringwanderungは昨年みょんが脱退し4人体制となった際、その締めくくりとしてアルバム「新夜」でaratayo ver.と題した再録版を4曲収録している。その後9月に新メンバーとして篠田百音を迎え再び5人となり、今回「リンワン春の楽曲祭」と題して全5回にわたり既存楽曲の現体制音源を発表した。発表された曲数は全20曲に及び、一部のいわゆる“レア曲”を除き現在ライブで披露されている楽曲のほとんどをカバーしていると言っていい。
今回は全パートを再録したわけではなく、一部を録り直したものに篠田百音のパートを加えてリミックスしたものということのようであるが、とはいえたった半年で20曲をレパートリーに加えレコーディングした篠田の努力は並大抵ではない。
リンワンに新しい風を吹き込む篠田百音の歌声
パワフルかつ伸びのある佐藤倫子、アニメ声的な確固たるキャラクター性を持った辺見花琳、柔らかく優しい増田陽凪、ニュートラルで説得力のある寺尾音々と四者四様の歌声を持ったRingwanderungに新たに加わった篠田百音の声。やや低めの倍音成分が多く深みを感じられる声色はこれまでのリンワンに全くなかった要素をもたらしている一方で、高音域までしっかり芯の通った力強さも持ち合わせており佐藤倫子と並んでパワー系方面の強化にも貢献しているように感じられる。
例えば「ササル」では1番Bメロでその深みのある声音を見せたかと思うと、サビの後半では佐藤からの繋ぎで力強さを印象付けている。2番サビでは佐藤とパートが入れ替わるがこちらの連携も見事だ。